
日本勢が男子・女子ともに頂点に。パリ五輪後の「新時代」を占う激闘の8日間
2025年6月、世界遺産コロッセオの隣に設けられた特設スケートパークで、WST(World Skate Tour)ストリート・ワールドカップ・ローマ2025が開催された。世界中のトップスケーターが集結したこの大会は、男子・女子ともに新たなフォーマットのもと、かつてないほどの接戦と進化を見せた。
特に注目すべきは、男子・女子ともに日本勢が表彰台の大部分を独占したことだ。これはパリ2024オリンピック以降も続く「日本スケートボード強国時代」の象徴であり、世界中にその存在感を見せつけた形となった。
🇯🇵 男子ストリート:1点未満の差で決まった頂上決戦、日本勢が完全制圧
6月15日の夜、満員の観客に囲まれて行われた男子決勝は、歴史に残る名勝負となった。
🥇 白井空良(しらい そら) – 188.07点
🥈 佐々木音憧(ささき とあ) – 187.93点
🥉 小野寺吟雲(おのでら ぎんう) – 187.16点
この3人が魅せたライディングは、「日本スケートボードの技術的成熟」が極まった瞬間だった。
📊 新フォーマットの影響
今大会から採用されたのは、ラン3本+ベストトリック3本のうち、各セクションのベストスコアを合計する形式。
従来よりも「ラン(1本の流れとしての滑走)」の比重が増し、全体構成力・安定感・創造性が問われるルールとなった。
この変更は、実は日本勢にとって追い風だった。白井は「日本人はランが強い。ルールが変わっても、日本に有利に働くと思った」と語る。実際、白井・佐々木・小野寺の3人は90点超えのランを披露し、ベストトリックでも冷静にポイントを重ねて順位を守り切った。
🧑🚀 各選手の特徴と躍動
◉ 白井空良(23歳)
「世界一、計算できる天才」。白井のスケーティングは、決して派手さを前面に出すものではないが、難度・精度・構成すべてにおいて完成度が高い。
今大会でも、「バックサイド180スイッチノーズグラインド」で94.66点という驚異的なスコアを記録し、誰もが納得の優勝だった。
「勝ち切れたのは大きい。でも、日本人3人で争うのは複雑でもある」
◉ 佐々木音憧(18歳)
通称「TOA」。2023年・2024年の世界王者で、パリ五輪でもメダル候補に名を連ねた実力者。力強さと創造性を両立する稀有なスケーターで、難度の高い技を滑らかに繋げる能力が高く評価されている。
「ランに自信があったから、新フォーマットでの戦いはむしろ楽しかった」
◉ 小野寺吟雲(15歳)
大会最年少ファイナリスト。ジュニア世代から注目されていたが、今回の表彰台はまさに大きな飛躍。柔らかさ・創造性・冷静さを兼ね備えた「未来の世界王者」候補だ。
🇯🇵 女子ストリート:続く未來旋風、若手が世界の頂点に躍り出る
男子に続いて16日に行われた女子決勝も、観客の熱気と歓声に包まれる中でスタート。注目はやはり、東京・パリ五輪で連覇を果たした中山未來(なかやま みく)。だが、それを凌ぐインパクトを放ったのは、次世代の星たちだった。
🥇 高橋美羽(たかはし みう) – 185.34点
🥈 中山未來(なかやま みく) – 184.89点
🥉 アナ・パウラ・モレノ(ブラジル) – 180.44点
高橋美羽(17歳)は、冷静かつ情熱的な滑りで中山を下し、ついに世界の頂点に立った。
🌟 新世代の台頭と、中山未來の持つ存在感
◉ 高橋美羽(17歳)
東京出身。幼少期からスケートパークに通い、全日本ジュニアで頭角を現す。今回の優勝は、「中山未來超え」という意味で特別だった。ベストトリックで2本連続90点台をマークし、最終得点で逆転。
「中山さんはずっと目標。今日はそれを超えられて本当に嬉しい」
◉ 中山未來(21歳)
五輪2連覇を含む世界女王。経験と表現力ではやはり群を抜く。今大会でもスムーズなランと、定番のキックフリップ・フロントボードでファンを沸かせたが、惜しくも2位。
「若い子たちのレベルがすごくて、刺激になった。私も進化し続けたい」
🇧🇷 ブラジル勢の巻き返しと世界の勢力図
男子ではジオバンニ・ビアンナ、フェリペ・グスタボ、女子ではアナ・パウラ・モレノが表彰台に食い込んだブラジル勢。強さと自由なスタイルが武器だが、ルール変更による「安定性重視」の流れにやや苦戦した印象だ。
それでも、「トリック偏重」ではない次世代スケーターたちの台頭は、今後のWSTシリーズでも注目されるだろう。
🧭 総括:スケートボードは“次のステージ”へ
今大会は、フォーマットの刷新・選手層の拡大・若手の台頭が同時に進行した、いわば新時代の幕開けだった。
- ランとトリックのバランスを問う新ルール
- 日本勢のランにおける安定感と完成度
- 若手によるベテラン越え
- 表現と難易度の高度な融合
これらが混在する現在のストリートスケートは、「芸術」と「競技」が融合したハイブリッドスポーツへと進化している。
2026年以降のWSTシリーズ、そしてロサンゼルス五輪に向けて、世界のスケーターたちはさらなる創造と挑戦に乗り出すだろう。

📝 関連情報
- WST公式サイト:worldskate.org(外部リンク)
- スケートボード次回国際大会:WSTサンディエゴ2025(予定)
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